マラウイで昆虫や植物の写真を撮り始めたのは、首都リロングウェの市郊外の地域を拠点としてです。その時の移動手段として自転車が大きな役割を果たしてくれました。
職務質問との戦い
マラウイで定宿にしているロッジは、リロングウェ市の官庁街から3〜4kmほど北側に離れた地域Area 43にあります。付近には各国の大使公邸も所在していて、治安が良い閑静な住宅街になっています。少し足を伸ばせばトウモロコシ畑が広がる農耕地域になっていて心を和ませてくれることから、そのロッジを定宿として、先ずその地域を拠点として写真撮影をすることに決めました。
ところが、写真を撮るためにその住宅街を歩いていると、警備員を6人くらい載せたトラックが近づいてきて、その警備員に取り囲まれるという事態に何度も遭遇しました。
「ここで何をしているんだ?」『写真を撮っているんだけど。。。』
「何の写真を撮っているんだ?」『花や虫たちの写真を撮っているんだけど。。。見てみる?』
「何でそんな写真を撮っているんだ? 売るのか?」『個人の趣味で撮っているんだけど。。。』
「何が面白いんだ?」『貴方たちも音楽を楽しむと思うけど、それと同じなんだけど。。。』
「理解できない!」
というようなやり取りをして、「もういいから、この場所からすぐに移動しろ!」とどうにか放免してもらったのですが、こういうことを5回ほど経験しました。最後には、こちらの姿を見かけただけで「またあいつだよ、あいつは変人なんだ!」と言って通り過ぎてくれるようになりました。どうやら付近の住民が「不審な人間が歩いている」と通報していたみたいです。
流石にこのような不愉快な経験を繰り返すのには参ってしまい、また、警備員にも迷惑を掛けていることが理解できたので、住宅街で写真を撮ることは断念しました。
自転車がやってきた
住宅街で写真を撮ることは断念したのですが、これまでに見たことがない種類の花や虫たちの姿を写真に写したいという気持ちは抑えられませんでした。
そのため、トウモロコシの耕作地が広がる地域まで足を伸ばすことにしたのですが、歩いて行ったのでは時間がかかって撮影に使える時間が短くなってしまいます。最初はその移動も楽しんでいたのですが、流石にうんざりしてきました。
そこで自転車を購入することにしました。変速機がついた最新式の自転車も市場で見かけてはいたのですが、マラウイ人の多くが彼らの足に使っているシンプルで頑丈なタイプを選びました。
これは自分が子供の頃に親父が乗っていたタイプで、日本でも高度経済成長時代を支えた名機です。昔を思い出し、懐かしい思いを抱きながら、それを買うことに決めました。とにかく頑丈で壊れにくい。はず。。。
はず。。。だったのですが、実はこれがこの自転車との格闘の日々の始まりでした。その格闘の日々については、次回紹介します。